近年、インフレ率の上昇が世界的な問題となっています。日本でも2022年10月の消費者物価指数は前年同月比3.7%上昇と、1981年以来約41年ぶりの高水準となりました。インフレにより、生活費が増え、貯蓄を蓄える余裕がなくなるなど、家計を圧迫する深刻な影響があります。
一方で、インフレ環境下においては、一部の資産が値上がりし、むしろ資産形成に有利になる側面もあります。
本記事では、インフレ時代にふさわしい資産の組み立て方について、プロの視点からアドバイスします。株式、債券、不動産など主要な資産を適切に組み合わせることで、インフレに強いポートフォリオを構築できます。一時的なインフレ率の高騰に惑わされず、長期的な資産形成を目指しましょう。
株式:インフレ対策の駒として有力
株式は基本的にインフレに強い資産と言えます。企業が物価上昇に伴い製品価格を転嫁できれば、収益が増える可能性が高まります。実際、過去のインフレ期には株価が上昇したケースが多くみられました。
しかし一方で、インフレ進行で景気が悪化し企業収益が圧迫されるリスクもあります。また、金利の急上昇により、割高と見なされる銘柄の株価が下落する可能性もあります。
そのため、単に株式の割合を高めるだけでなく、インフレ対策に適した業種・銘柄を選ぶ必要があります。具体的には、以下の点に注目するとよいでしょう。
●原材料・人件費などのコスト増加を容易に製品価格に転嫁できる
●需要の変動が少なく、生産調整の必要が少ない安定業種
●高付加価値製品を供給できる優良企業
つまり、教科書的に書くとするならば、コスト転嫁力が高く、需要変動リスクが低い消費関連株や生活必需品関連株、優良なヘルスケア株やIT株などがインフレ対策に有力だと言えます。
債券:実質金利がマイナスにならぬよう注意
一般に債券はインフレと相性が悪いと言われています。なぜなら、インフレが進行すると実質金利(名目金利からインフレ率を差し引いた金利)がマイナスになり、債券の投資収益率を下回ってしまうからです。
とはいえ、無理に債券の比率を下げるのではなく、少なくとも実質金利がマイナスにならない範囲で債券を組み入れることが重要です。債券にはリスク分散のメリットがあり、株式とのバランスを保つ意味でも一定量の組入れは必要不可欠だからです。
債券の種類としては、教科書的にはインフレ連動債が有力な選択肢です。元本や利子がインフレ率に連動するため、実質金利がマイナスになるリスクが低くなります。ただし、流動性が乏しいため組入比率は限定的にすべきでしょう。債券にも様々な種類がありますので、柔軟に対応しましょう。
普通の国債や社債の場合は、金利が十分に上昇して初めてインフレ対策として有効になります。現状の低金利環境下では、やや投機的になりがちです。発行体の信用リスクにも気をつける必要があります。
不動産:インフレ時代の逸品だが買い時は限定的
不動産は、株式と並びインフレに強い資産の代表格です。地価や家賃は物価に概ね連動するため、実質の資産価値が維持されやすいことが大きな利点です。
加えて、賃貸物件の場合、賃料収入の名目価値が上がるためキャッシュフローが増加します。一方、借入金の返済負担は重くならず、レバレッジの効いた収益性向上が期待できます。
物件の種類としては、相対的に安定した賃料収入が見込める住宅用賃貸物件や商業施設などが人気です。ただし、テナントの退去リスクには注意が必要です。
ただ、インフレ初期においては、不動産の売買価格が上がる前に購入できるチャンスがあります。一旦インフレ期に入ると価格上昇が進むため、必要資金の確保が難しくなり買い時を逸してしまう可能性があるのです。
不動産投資の場合、物件の個別事情によるリスクが高いことにも留意が必要です。プロの専門家からのアドバイスを仰ぐなど、十分な事前調査が重要になります。
資産別の比率設定とリスク分散が肝心
このように、株式、債券、不動産はそれぞれメリット、デメリットがあり、単独では万全のインフレ対策にはなりません。むしろ適切な資産配分を行い、複数の資産を組み合わせることが賢明です。
具体的な資産配分比率は、個人の年齢やリスク許容度によって異なります。例えば、リスクを取れる若年層は、株式や不動産の比率を高めに設定し、債券の比率を低めにするなどの工夫が考えられます。
また、株式や不動産の中でもさらに分散投資を行うことで、特定の銘柄や物件に集中するリスクも避けられます。インフレ対策としての効果を最大化するには、分散投資が不可欠なのです。
インフレリスクに備える上で大切なのは、資産運用の視点をひとつに絞ることなく、バランスの取れたポートフォリオを組成することです。さらに金融リテラシーを高め、経済環境の変化に合わせて機動的に資産構成比を見直す姿勢も求められます。プロのアドバイスを参考にしつつ、自らの目標に合った資産運用を行いましょう。
最後に強調しておきたいのは、インフレはいずれ落ち着くものの、資産形成の重要性は永続的であるということです。短期的なインフレ対策に振り回されるのではなく、長期的視点に立って着実に資産形成を進めていくことが賢明です。不動産や株式、債券など幅広い資産の特性を理解し、最適なポートフォリオを組んでいきましょう。
さいごに
インフレ対策としての資産運用は、長期的視点が欠かせません。一時的なインフレ高進に振り回されるのではなく、株式、債券、不動産など各資産の特性を理解し、バランスの取れたポートフォリオを構築することが大切です。
また、経済環境の変化に合わせて機動的に資産構成比を見直し、分散投資を心がけることも重要です。プロの助言を参考にしつつ、自らの目標とリスク許容度に適ったアプローチを取ることをおすすめします。
短期的には痛みを伴うかもしれませんが、インフレを長期投資のチャンスと捉え、着実に資産形成を進めていけば、やがては豊かな老後が待っているはずです。目先の環境変化に惑わされず、しっかりと「マネープラン」を立ててインフレに立ち向かいましょう。